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どの学校、どの課程で学んでも、次の段階に進むときに、コースを変えることのできるシステムである。
アメリカや日本の制度がこれを理想としてつくられ、改善を重ねてきたことは、いまさらいうまでもないことである。
「複線型はそうかもしれないが、多線型はそうではない」といわれるかもしれない。
確かに管見するかぎり、多線型という言葉は複線型のような確定した意味の言葉として使われたことはない。
教育システムに関する新しいアイデアとして提言されているととれなくもない。
しかし、少なくともその言葉が中高一貫校是非論のなかで言われたことから判断するかぎり、制度としての機能を考えるなら、複線型と同義である。
学校は、一貫校入学者にはこれまでとは別の選択肢を提供したことになるが、それ以外の生徒には、確実に選択の幅を狭めることになる。
また、一貫校人学者にとっても、六年間同じトラックを進むように制限されたことになる。
むろん学校が「よい学校」と判断されるかぎり、そして、その学校に格別の不満がないかぎり、六年間同じトラックを進まなければならないことにも不満はないであろう。
しかし、ここで注意しなければならないのは、たとえこの種の満足を根拠にするにしても、早い段階からのトラックの分化(学校の種別化やコースの分化)を制度化することは、システムを複線化することにほかならないということである。
イギリス社会の階級的遺制に基盤をもつ名門パブリックスクールがどれだけ優れた教育をしているといわれようとも、それが恵まれた階層の子弟のためのものだという事実を否定することはできない。
さて、以上のように考えると、すなわち、前述の三つの公準と二つの条件を考慮すると、日本の「六・三・三制単線型」の学校体系は、基本的にはきわめて望ましい特質を備えたものだということになる。
むろん、改善の余地がないわけではない。
その改善の余地は、制度面に関するかぎり、ほとんどが高校段階以上にある。
この点については、筆者はすでに1980年前後にいくつかの論文と研究報告書のなかで書いたところであるが、高校の単位制や科目選択制の拡大、高校の学科編成やカリキュラムの「現代化」など、近年進められている高校改革の多くは当時からの筆者の考えと整合的なものであり、必要な改革であるといえよう。
最初に、一つの調査結果を見てみよう。
文部省が1995年に実施した休みの土曜日の過ごし方に関する調査の結果、多かった活動項目の上位三つをあげてあるが、小学校2年生では、「近所での遊び等」「ゆっくり休養」コアレビゲーム等」「習い事」「テレビ等」の五項目、小学校5年生では、「ゆっくり休養」「近所での遊び等」「テレビゲーム等」の三項目、中学生では、「ゆっくり休養」「部活動」「家での勉強」「テレビ等」の四項目、高校生では、「ゆっくり休養」「部活動」「テレビ等」の三項目となっている。
94年の調音・結果もほぼ同じであるから、休日の土曜日の過ごし方は、当分はこのあたりで推移すると見てよいであろう。
この結果を見て、読者諸氏は何を考えるだろうか。
文部省は、当初懸念された塾通いの増加は見られず、おおむねゆとりや多様な体験の機会として活用されていると積極的に評価している。
しかし、この調査結果はそれほど楽観できるものではない。
この結果は、少なくとも次の休みの土曜日の過ごし方で注目すべき事態が進行していることを示唆している。
第一は、「ゆっくり休養」の割合が、学年が上がるにつれて多くなっていることである。
とくに午前中に多いが、その割合は、小学校二年生では約12%、同五年生で1.1%、中学校二年生で29%、高校二年生では37%になっている。
「テレビ等」や「テレビゲーム等」も同質の時間と考えるなら、その割合はさらに多くなる。
ともあれ、「ゆっくり休養する」というと聞こえはいいかもしれないが、この年齢層の子どもにとって、それはどういう時間であろうか。
それは、見方によっては《怠惰な時間》と考えられよう。
とくに中学生・高校生では、朝寝坊して、そのうえ何をするでもなくごろごろしている時間と見るほうが妥当であろう。
このことは二重の意味で重要である。
それは、一方で、《怠惰な生活時間》が拡大しているということであり、もう一方で、生活スタイルの分極化が進んでいるということである。
むろん何をするでもない《怠惰な時間》は「ゆとりと休養」の重要な要素である。
それは確かなことであるが、もう一方で、とくに中・高校生の場合、それは親子間の些細なトラブルの機会が拡大し、親子関係のズレや忠化を招く可能性が高まるということでもある。
親の態度が許容的である場合にはあまり問題化しないかもしれないが、そうでない場合には身体的には休養になっても、心理的には休養になるとはかぎらない。
それは、休日に「のんびりしたい夫」と「家事をしなければならない妻」とのミゾが深まる場合が少なくないことを考えても、想像のつくことであろう。
学年が上がるにつれて、生活スタイルの分極化が進むということも重要な点である。
「ゆっくり休養」「テレビ等」といった非活動的な時間を過ごす子どもと、部活動や勉強や家事手伝い等の活動的な時間を過ごす子どもとに分かれるということである。
自由な時間が増えるということは、一律に積極的で好ましいと考えられる時間が増えるということではなくて、時間の過ごし方が多様化し分極化するということである。
「富める者はますます富み、貧しき者はますます貧する」という格言のように、豊かな時間を過ごす子どもはますます豊かになり、貧しい時間を過ごす子どもはますます貧しくなる。
もっと厳密にいえば、もともと豊かな時間を過ごしている子どもは、土曜日が休みになっても時間の充実度に大きな違いけないが、そうでない子どもにとっては、《怠惰な生活時間》が増えるだけということになりかねないということである。
そして、この傾向は学年が高くなるほど確実に強まる。
この問題は、注目すべき第二の傾向とも関連している。
それは「家での勉強」という項目が、中学二年生で約10%で第三位になっているものの、小学生と高校生では三位以内にも入っていないということである。
この結果は、学校週五日制導入の目的が「ゆとりのある生活の実現」にあるのだから、むしろ望ましいこと、期待されたことだといわれるかもしれない。
しかし、本当にそうだろうか。
生活時間調査でも、子どもの「学校外での学習時間」は数年来激減しているが、この学習時間の減少という事態もまた二重に重大な問題をはらんでいる。
それは、一方で学業についていけない生徒がますます多くなるということを意味し、もう一方で、「インフラとしての初等・中等教育」が揺らぐということを意味するからである。
実際、1970年代以降、教育界では「七・五・三」ということがしばしばいわれてきた。
すなわち、学校の授業内容を理解できている生徒の割合が、小学生で七割、中学生で五割、高校生では三割でしかないというのである。
その背景にはさまざまの要因があるが、数学の場合でいえば、1968年の学習指導要領の改訂により、小学校の算数に集合や関数の考えが導入され、中学校では変換や位相の考えが導入されるなど、いわゆるカリキュラムの現代化・高度化が進んだことや、70年代になると、校内暴力が頻発するようになり、「ゆとりの時間」が導入され、たとえば中学では、英語の時間が週当たり三時間に減らされたことなどが、その背景として指摘されてきた。
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